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2022.01.12 国内知財情報

新薬の治験は特許法69条1項の試験又は研究に該当する

1.はじめに

医薬品企業にとって、自社の医薬品の製造販売承認申請を行うためには、治験等の所定の試験を行う必要があります。

下記の「2.」の項目に記載のとおり、最高裁判決において、「後発医薬品」の製造販売承認を得るために、特許発明の技術的範囲に属する医薬品を製造、使用等する行為は、特許法69条1項の「試験又は研究」に該当し、特許権の侵害には該当しないことが判示されています。

しかし、この最高裁判決においては、「後発医薬品」の製造販売承認を得るために必要な試験の実施が「試験又は研究」に該当することしか判断されておらず、当該判断の射程範囲に後発医薬品以外の医薬品(新薬等)が含まれるか否かについては示されていませんでした。

今般、この最高裁判決の解釈が新薬の場合にも妥当し、「新薬」の製造販売承認申請のために必要な試験の実施についても、特許法69条1項の「試験又は研究」に該当し、特許権侵害にはならないことが判示された知財高裁判決(令和2年(ネ)第10051号)が出されました。

以下、本知財高裁判決について紹介します。医薬品企業様等の製造販売戦略において、参考となれば幸いです。

※特許法69条1項:「特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない」

 

2.最高裁判決(最高裁判所平成11年4月16日第二 小法廷判決・民集53巻4号627頁)

この最高裁判決では、後発医薬品の製造販売承認を得るために必要な試験の実施が、特許法69条1項の「試験又は研究」に該当するとの判断がなされています。その理由は以下のとおりです。

後発医薬品について、その製造の承認を申請するためには、あらかじめ一定の期間をかけて所定の試験を行うことを要し、その試験のためには、特許権者の特許発明の技術的範囲に属する化学物質ないし医薬品を生産し、使用する必要がある。特許権存続期間中に、特許発明の技術的範囲に属する化学物質ないし医薬品の生産等を行えないとすると、特許権の存続期間が終了した後も、なお相当の期間、第三者が当該発明を自由に利用し得ない結果となるが、この結果は、特許権の存続期間が終了した後は、何人でも自由に その発明を利用することができ、それによって社会一般が広く益されるようにするという特許制度の根幹に反する。

 

3.本知財高裁判決(令和2年(ネ)第10051号)

まず、前提として、本知財高裁判決は、上記の最高裁判決と比較して、以下の点で事情が異なります。

(1)対象医薬品が新薬である点
(2)対象医薬品がバイオ医薬品である点
(3)対象行為が、ブリッジング試験(外国の臨床データが国内の患者でも再現されることを確認するための試験)を行うための医薬品の製造等である点

しかし、上記事情を鑑みても、本判決においては、新薬の製造販売承認申請のために必要な試験を行うことは、後発医薬品の場合と同様、特許法69条1項の「試験又は研究」に該当すると判断されました。具体的には、本判決では、新薬の製造販売承認を得るために必要な治験が特許法69条1項 の「試験又は研究」に該当することは、原判決「事実及び理由」の第4の1(2)のとおりであると判断され、原判決(第一審判決)が支持されています。

ここで、原判決「事実及び理由」の第4の1(2)では、以下の判断がなされています。

(イ)新薬についても、後発医薬品と同様、その製造販売の承認を申請するためには、あらかじめ一定の期間をかけて所定の試験を行うことを要し、その試験のためには、本件発明の技術的範囲に属する医薬品等を生産し、使用する必要がある。

 

(ロ)製造販売の承認を申請するためには、あらかじめ一定の期間をかけて所定の試験を行うことを要するので、本件特許権の存続期間中に、本件発明の技術的範囲に属する医薬品の生産等を行えないとすると、特許権の存続期間が終了した後も、なお相当の期間、本件発明を自由に利用し得ない結果となるが、この結果が特許制度の根幹に反する。

 

(ハ)被告が、本件特許権の存続期間中に、本件特許権の存続期間満了後の譲渡等を見据え、製造販売承認のための試験に必要な範囲を超えて新薬を生産等し、又はそのおそれがあることをうかがわせる証拠は存在しない。

 

4.まとめ

後発医薬品の場合と同様の趣旨により、新薬の製造販売承認申請のために必要な試験の実施についても、特許法69条1項の「試験又は研究」に該当するとして、特許権の侵害には該当しないことが判示されました。

なお、本知財高裁判決にも示されているように、正当権限なく、製造販売承認申請のために必要な試験範囲を超えて特許発明の技術的範囲に属する新薬を製造等する行為が特許権の侵害に該当することは、当然に留意すべきであると考えられます。

本知財高裁判決の内容は、医薬品企業様等の医薬品製造販売戦略を考える上で、参考になると考えます。本知財高裁判決の内容を各企業様の企業活動に生かしていただくと幸いです。

なお、当法人には、医薬品の薬事制度に精通した弁理士が複数所属しています。医薬品企業様等の医薬品製造販売戦略に関し、具体的事例について相談していただければ、適切にアドバイスさせていただきます。

弁理士:辻雄介

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